「False Island 3期」のキャラブログ
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2010.11.29.Mon
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2010.09.21.Tue
【日記】44日目 袋小路

  

44日目日記


「おじいちゃん…?」

返事はない
何度呼びかけても、いくら待っていても、反応らしい変化は何もなかった



 

「え…何、どういう事…?」

ポツリと呟いた律に、晃はハッと顔を上げる

「律っちゃん、携帯!」
「え…あ…?」

律から奪い取るようにして携帯を手にとると、晃は一心不乱にキーを打ち込む
その顔は青褪めているのと同時に、興奮からか赤みを帯びているようにも見える

「…もしもし!?お母さん?アタシ!」

そこでようやく律は、兄が家に電話を掛けたのだという事に気付く
少し考えれば当然の行動ではある
だが、逆にそこまで見なければ、自分の兄が何を思い、何の為に何をしようとしていたのか、
それすらも分からなかった程に、律の気は動転していた



『――もしもし?』



携帯の奥から声が聞こえる
どういう事なのか、―おそらく緊張のあまり、聴覚が研ぎ澄まされたからなのだろう、
兄の横で立ち竦んでいる律の耳にも、その声は届いた

柔らかい声だ

「お母さん!―ああ、良かった、ううん、そうじゃなくて…
ええと、おじいちゃん今そこにいる?ちょっと代わって欲しいんだけど」

『………………』

母親からの返答はない

「? …お母さん?」

『………………』



やはり母親からの返答はなかった
空気の音というのだろうか
僅かに雑音が聞こえてくるから、通信が切れている訳では決してない
そして、明らかに、母親は、受話器を手に取り、そしてそこにいるのだ

では何故黙っている

「お母さん…?」
『……………』
「ちょ、ちょっと、やめてよ…なんで黙ってるの?
もしかしておじいちゃん、に、何かあった…―んじゃないわよね?そうよね?
…ねぇ!」

やはり母親は黙ったままだった
僅かな呼吸の音が聞こえるのが、一層不安を掻き立てる


…いやな予感がする
急に切れた通信
それが意味するのは一つしかないのではないか

「お…兄ちゃん…まさか…まさか、じいちゃん」
「バカ!そんな訳、ないでしょ!」

律の言葉を遮るかの如く叱咤するが、晃の顔は先ほどよりもずっと蒼白になっていた




『――あの、…もしもし?』

声が聞こえる


















『どちら様でしょうか?』



「「…………え?」」

同時に声が出る
思考も時間も止まってしまったかのように、一瞬の空白ができる
次の意識が脳裏に浮かぶよりも早く、携帯の奥からはさらに声が聞こえた

『どうした』

もう随分聞きなれた、低く太い声

「おと
『あなた…それが、無言電話みたいで…』







今度は声として出る事はなかった
一人分の声すらも聞こえる事はなかった
二人とも絶句したのだ 声になどならなかった
夫婦の会話は携帯越しに更に続く

『いやだわ、何だか怖い…いたずら電話かしら
変な電子音みたいな音も聞こえるし…盗聴されていたり…』
『貸しなさい ―もしもし?』

先ほどより一層、父親の低い声が澄む
辛うじて先に冷静さを取り戻した晃が、恐る恐るその声に応えた
声は小さく僅かに震えている

「お…お父、さん?分からないの?
ねぇ、ほんとに聞こえないの?アタシよ、…晃よ」
『どちら様ですか?何か、うちに御用ですか?』
「お父さん」
『誰だか知りませんが、こんな事はやめてくれませんか』
「お父さん」
『あまりしつこいようだと警察を呼びます』
「お父さん!」
『………………』
「………………」


父親が黙り込めば、晃もまた黙り込むしかなかった
何を言えばいいのか
何を言えばいいというのだ
相手はこちらの声が聞こえていないというのに


少しの沈黙の後、携帯の奥からため息が漏れる


『…確かに、無言電話だな』

ブツッ




その声と音を最後に、父と母の声は途切れてしまった
ただそれを知らせる電子音だけが、プー、プーと単調に二人の耳へと流れていた






今現在、自分達に何が起きているのか、それは晃にも律にも分からなかったが、
携帯から聞こえたものから、この場で何が起きたのかは理解した

「どういう…事…?」
「落ち着いて、―落ち着くのよ、状況を、整理、しないと」

それを聞いて、律もぎこちないながらも小さく頷いた

「まずは事実、まりん☆ちゃん―つまりおじいちゃんの身に何かが起きて、
私達と連絡を取る事ができなくなったという事
あれからずっと反応らしい変化もないから、
ちょっとしたトラブルだとか、そういうものじゃ、ないんだと思う」
「うん」
「そして、お父さん達とは…一応連絡はついたけれど、
まるでアタシ達の声が聞こえていなかった」
「う、…ん」

「うん」と、ただそれだけの言葉すらうまく口から出すことができない
それでも、何らかの同意を示さなければと、律はやっとの事で首を縦に振る
初めに小さく一度、そして確認するかのように更に何度も小さく首を振る

「次に推測ね
電話の様子からして、お父さん達はまだ
おじいちゃんの身に何が起きたか知らないらしいという事、
そして二人はアタシ達がゲ−ムの中にいるという事も…多分知らない」

晃は爪を噛む
真っ青な顔色は変わらないまま、表情だけが少し険しくなる

「通信ができない
でも少なくともアタシ達には、ゲームが正常に起動しているように見える
つまりゲームマシンは動いたままだという事
ううん、もしゲームが止まっていたんだとしても、
アタシ達はまだゲームの中にいる…つまり催眠状態は解けていないって事」
「でも、何で、声が…声だけ…」
「お母さん達は電子音が聞こえるって言ってた」
「電子音」
「おじいちゃんが作ったのは脳波をデータに変換する機械
その携帯から聞こえるものが、暗示や幻聴なんかじゃなく、
実際に現実と繋がっているという事を、アタシ達は既に確認しているわ」

そうだ、と律も胸の中で同意する
確かに繋がっていた
両親、正太郎、友達、学校、これまでに何度となくゲームの中から電話を掛けたが、
後日それらを確認してみれば、一度だってそれらが不十分であったという事はなかったのだ
多分、と晃は前置きして言葉を続ける

「アタシ達が催眠中にも構わず、外と連絡が取れていたのは、
データ化した脳波を、おそらく、音声データとか、
そういうものに、変換して流していたんじゃないかしら」
「まさか」
「それすら信じられない事だけれど、でも、
信じられない事だというなら、このゲームの存在からしてそうでしょう」

ゲームは動いている
しかし動いているだけで、他の細かな機能などは機能していない




―電源だけが入り、無人のまま放置されたゲーム機







「そもそも、おじいちゃんが『どこ』でゲームをプレイしていたかという話よね
家でそんな大層なゲームができるものかしら
もしパソコン一つでやっていたんだとしても、
それなら、お父さん達がゲームの事を知らない筈ないんじゃないかしら
普通にやっていれば、おじいちゃんの行動なんてすぐに目につく筈じゃない」
「じゃあ…」
「ええ、おじいちゃんは多分、家ではないどこか別の場所でプレイしていた
…していた、という事になるのよ…普通に、考えれば…でも…」

兄の声は重い
先ほどよりも一層顔色が悪くなっており、表情は大きくこわばっている
息苦しそうに肩を震わせているが、律はなぜ兄がここまで動揺するかが分からなかった
兄のこの狼狽えようはどうした事か
勿論、自分達が置かれている状況が
全く笑えないものだという事は、律も十分に理解してはいる
いるのだが、しかしそれを含めても、
兄がこれほどまでに狼狽するに至る原因が律には分からなかった

「でも、だったら…もしそうなら…」
「お兄ちゃん…?」


「それじゃあ、一人倒れたおじいちゃんを、『誰が』見つけるっていうの?」





すっと何かが「落ちた」気がした
感覚的にまず感じた事はそれで、もしかしたらこれは目の前が暗くなるとか、
そういう風に表現するものなのかもしれないな、と思う

感動もせず、何も感じる事はなく、
あ、落ちたな、という感覚を客観的に無感動に意識する
落ちたというよりは沈んだといった方が近いのかもしれない

落ちた、沈んだ、何か、何だろう、あああれか、あれだ
絶望で、悲愴で、倦怠で、嫌悪で、執着、憤怒、不安
希望も可能性も意欲も何もかも

勿論それらを一つ一つ認識する事はなかったが、
おそらくそういうものだったのだろう、考える事も面倒くさい
沈んで、胸元が軽くなり、身軽さや爽快さすら感じる程だというのに、
それらがやけに気味が悪く思え、気持ちが悪い

視界が薄暗いまま、うっすらと全身に汗がにじむ 何だか少し寒い
それらを感じ取った瞬間には既に、落ちた筈のそれらがじくじくと足元を染め上げている
足元、と思った瞬間には既に胸元まで侵食していた

そんな事を考えた ―漠然と、感覚的に

そこからよく、こんな言葉が浮かんだものだなと思う



―仲間



思わず目を見開き、律はとっさに声を上げた

「―仲間、そう、仲間!仲間がいるかもしれないじゃん!
だって…このゲーム、結構凄いやつなんでしょ?
そんなの…じいちゃんが、一人で、作れる訳、…ない…
お金だって、場所…だって…誰にも知られずにとか、…そんな」
「そうなんだけど、でも…
おじいちゃんに共同制作者がいるような話、アンタ聞いた事ある?」
「それは……」
「それに、仲間がいるのなら、
なおさら、未だに何の反応もないのはおかしいわ そうでしょう?」
「……………」

律はそれ以上何も言えなかった
そもそも全ては推測の域を出ず、
何かを言えるほど、状況が把握できている訳でもなかったし、
思いつくのはどれも最悪の事態を想定したものばかりだった

何か打開策はないかという思考に耽っているのだろう、
晃の表情には先ほどまでの険しいそれはなく、視線を落としている
次第に口数は減り、顔も下へと沈んでいき、
ついには完全に押し黙って俯いてしまった



「…まずいわ」



ぽつりと晃の口から零れる
僅かに上げた兄の顔は、青を通り越して白くさえも見えた

「これは…まずいわ、
よくよく考えてみると、これは、この状況は…非常にまずい」

何を今更、と律は胸の内で静かに力なく毒づく
今更それが何だというのだ
そんな事は知っている そんな事は初めから分かりきっている事だ
顔が無表情のまま強張って、それが表情に出る事はなかったが
―なかった筈だ
しかしそんな律の思いに気付いてか、晃は律の顔を僅かに睨みつける

「忘れたの?これは催眠ゲームよ
アタシ達の本体はこっちじゃない、あっち

…食べなきゃ死ぬわ」
「―あ…」

思わず声を出す

「アタシ達が戻れるかどうかはおじいちゃん次第
飲まず食わずで数日ゲームの中で待つくらいならまだいいわ
でも、もしおじいちゃんの身に万一の事があったら?
…その時点でアタシ達も終わりよ」
「………それは」
「それでも、こう言っては何だけど、
アタシ達はある意味、おじいちゃんよりは比較的安全なのかもしれない」

晃が再び視線を落とす
律に話すと同時に思考に戻る

「おじいちゃんが一人で、誰にもゲームの事を話さずにプレイしていたとして、
万一の事が起きた時、発見が遅れて、手遅れになる可能性は大いにある
でもそれで家に1日、長くても2、3日帰らなかったら、
流石にお父さん達だって異変に気付く筈よ
アタシ達にも連絡を取ろうとするかもしれない
それでアタシ達とも連絡が取れなかったら、
こっちまで様子を見に来てくれる筈よ、そんな遠くじゃないんだから
だから、アタシ達は数日中に発見される可能性は高いし、
例え催眠状態で意識がなくても、医者を呼んだり、点滴でもして延命処置はしてくれる筈」

「でも、じいちゃん…あんな性格だし…
お父さんもお母さんもどこかのんびりしてるし…
何日も帰らなくても、そんなに気にしないかも…」

「もしそうだとしても、アタシ達には学校やバイト先があるでしょう
無断で何日も休んでいれば、やっぱりお父さん達に連絡が行く筈」

「う、うん…」


それでほんの少し安堵する
それで両親が気付いて、何とかしてくれれば戻れるかもしれない


「でも…じゃあ、もし仮に誰かに発見されたら?」
「え?」

兄の顔は強張ったままだ

「アタシ、催眠とかはよく分からないけど…全くの素人だけど…
でも催眠中に無理やり起こされたらどうなるの?」
「―――…」
「アタシ達、無事に起きられるの?
脳に障害が残るとか、そういう可能性、ない訳じゃないでしょ」
「それは…」
「もしおじいちゃんが死…万一の事があったり、
それでなくとも発見がアタシ達より後だったら……
アタシ達の発見が早ければ早いほど、その危険性は高くなるし早まるわ」

逆だってそうよ、と晃は息をつく間もなく己の推測を口にする

「おじいちゃんが先に発見された場合もそう、
倒れたおじいちゃんの傍にゲーム機があったとして、
発見した人はそれが何なのか分かるのかしら
第一発見者が何もせずに医者やレスキューを呼ぶっていうの?
ううん、呼んだとしても、呼ばれた人間が同じなら意味がないのよ
おじいちゃんが倒れた原因が、起動しているゲーム機にあるように見えたら、
とっさに電源を消そうとしない?」
「お…に…」
「電源を切ったらどうなるの?
強制終了されたらアタシ達はどうなるの?
再起動すれば元に戻るっていうのならいいけど、
そんな保障、どこにもないでしょう?」
「お兄、ちゃん…」

やめて、という言葉は声にはならなった
絶望的な可能性ばかりを口にする兄の姿が、
どうしても、自ら退路を断っているようにしか見えなくて、
ただただそれが恐ろしかった

「その上、おじいちゃんのサポートがないというのは大きいわ
今、戦闘イベントなんか起きてみなさいよ 洒落にだってならないわ」
「でも…でもお兄ちゃん、
システムで…だから、このゲームじゃ、死なないって…」
「そうね、そうよね…でもね律っちゃん、よく思い出して
アタシ達、一度でも『直に戦闘に負けた』事があった?」
「―――…」
「大抵いつも、負けそうになったら、強制的にログアウトしていたじゃない
一定以上のダメージを受けたら、自動的にログアウトするって言ったけど、
じゃあ今の、正常に起動できてないこのゲームで、戦闘に負けたら?」
「それは」
「ログアウト出来るかもしれないし、出来ないかもしれない
少なくとも、そんなリスクを背負ってまで、アンタ、試せる?」
「……………」

律は俯いてしまった
晃もまた深く項垂れる



「…一つだけ…アタシが考えられる上で、一つだけ可能性があるのは、
このゲームをクリアする事…」
「クリア…?」
「クリアしたら、少なくともそれ以上イベントは起きない
戦闘イベントが起きる事はないのよ
ううん、クリアするって事は、それ以上のイベント…
つまりデータが送られてくる事がないって事だから、
送られてくるデータが何もなくなったら、もしかしたら、自動的に目が覚めるのかも
それでなくても、もし目が覚めなくても、イベントが起きたとしても、
『クリアしたから大丈夫』という自己暗示で、無理やり起こされても大抵の脳障害は阻めるかもしれない」
「でも…」

ええ、と妹の言葉に晃は短く相槌を返す

「でもその為に、自ら戦闘イベントを起こすっていうのは本末転倒だわ」
「……………」
「ずっと発見されないままでいるのは、もちろん危険
でもすぐに発見されるというのも危険
このまま何もせず、大人しく待っているだけも危険だけれど
だからと言って、下手に動き回るのも危険」






「…お手上げだわ」




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『ゲームである』という意識があるために、逆に何もできなくなる


| 16:29 | 日記・呟きログ |

2010.11.29.Mon
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